市民の憩いの場となっている勢至公園は、県内でも有数のさくらの名所。700本にも及ぶソメイヨシノが空を覆い尽くし、静かに水をたたえる観音潟(かんのんがた)と竹嶋潟(たけしまがた)、仰ぎ見る鳥海山(ちょうかいさん)との組み合わせはまさに絶景で、昭和52年には新観光秋田30景の1つに選ばれています。
 この見事なソメイヨシノは、日露戦争に出征した金浦出身の有志が明治40年その凱旋記念として植樹したことに始まり、その後の植樹運動の高まりとともに本数を増やし、現在の美しい桜回廊がつくられています。特に、観音潟の周囲1kmに枝を広げた桜並木は見所の1つ。県内で最も早く楽しめる桜の散策スポットとして人気を集めています。
園内には他にもツバキ、マルバグミ、ツツジなどが次々に花をつけて訪れる人の目を楽しませています。また、勢至山に自生する暖地性の「タブの木」は、その数130本にのぼり、日本海側では最北限の群落地として、昭和47年に県の天然記念物に指定されています。
 古くから金浦随一の景勝を誇る勢至山一帯は、かつてこの地から木の仏像が出土し、それが「得大勢至菩薩」の姿だったという言い伝えがあります。その敬虔な信仰を受け継ぐように、園内や近くの金浦山神社周辺には、安政4年(1857年)に西国三十三札所になぞらえられた33体の観音石仏が建立されています。
 そして、これらの石仏の姿が水面に映ったことからその名がついたという観音潟は、縄文時代晩期の紀元前466年に噴火した鳥海山の泥流によってつくられたという太古のロマンをたたえながら、現在はヘラブナ釣りのメッカとして愛好者たちに親しまれています。また、竹嶋潟の中央に浮かぶ島は大蛇伝説が残る「禁断の島」でしたが、平成2年に白瀬南極探検隊記念館が完成して周囲の整備が進み、現在では市民たちの格好のジョギングコース、散策路となっています。