鳥海山北麓の仁賀保高原の一角に冬師(トウシ)という珍しい地名があります。この付近には、あちこちに「流れ山」と呼ばれる小さな山(丘)の高まりがあり、その間に無数の小さな溜池があります。似ている地形は象潟の九十九島です。
これらの地形は紀元前466年に発生した鳥海山の山体崩壊により造られました。鳥海山を見ると、北に開いた馬蹄型の窪みがあることがわかります。冬師湿原や九十九島で見られる小山は、山頂から滑り落ちてきた巨大岩塊の集積で、山と山の間が窪地になり、滞水域となって冬師湿原が形成されました。
湿原は四季の表情が豊かな土地で、いろいろな花が咲き、ハンノキが群生している貴重な湿原です。春先や晩、秋の早朝には朝靄が立ちこめ幻想的な風景になります。
毎年4月には火入れが行われ、扇谷地と大潟溜池の間約260ヘクタールのススキの原に火の帯がはしります。昭和20年頃から行われている地元の春の風物詩です。